給与計算解説 残業代・休日出勤手当編
残業代や固定残業代、休日出勤手当についての計算方法について、
及び職場において制度を構築、運用する場合の注意点について解説します。
残業代や固定残業代、休日出勤手当についての計算方法について、
及び職場において制度を構築、運用する場合の注意点について解説します。
残業代や休日出勤手当に関してあらかじめ把握しておかなければならない事は、その職場における残業や休日出勤の定義です。
実は労働基準法には割増賃金の対象となる労働と、休日についての定めはありますが、一般的によく使われる「残業」や「法定休日」といった言葉は登場しません。 割増賃金の対象となる労働についてはその計算方法を、休日については設けるべき休日の日数が定められていますが、「所定外労働」と呼ばれる所定労働時間外ではあるが法定労働時間内に留まる残業時間や、法定休日や所定休日といった休日の区別については定められていないのです。 定められていない領域については、法令に反しない範囲内で使用者が独自にルールを設けることができますが、給与計算者はその職場における残業や休日出勤の定義を正確に把握していなければなりません。 これから新規にルールを設けようとする使用者も、就業規則や労働条件の策定に際して抽象的な表現とならないように言葉を選ぶ必要があります。 |
残業や休日出勤のルールを設けるうえで決めなければならない事
労基法で定める割増賃金の対象となる労働について
法定外労働、深夜労働、法定休日労働です。
法定外労働とはならない残業について
一般的な残業という言葉の意味は、定められた労働時間の前後にその労働時間を延長して労働する事とされ、労基法に定める割増賃金の対象とすべき労働時間と同義ではありません。
一日の労働時間が8時間の労働者にとって残業すなわち法定外労働となりますが、3時間の労働者にとっては1時間の残業でも法定外労働にはなりません。
通常の労働時間以外の労働であるが法定外労働ではないいわゆる「所定外労働」に対して、労基法は特別の定めを設けていません。
割増賃金の規定は法定外労働、深夜労働、休日労働から労働者を保護することが目的であり、所定外労働はその定義の範囲外にあります。
しかし、割増賃金の対象となる労働ではないとしても、一般常識から考えてこの労働は勤務時間外の労働であり、残業と呼ばれるべきものであるため、社会において他の割増賃金の対象となる労働と同様に扱うことが一般的です。
この場合、法定外労働に義務付けられる割増をせずに、時給相当額を支給する仕組みの会社がほとんどでしょう。
他にも、法定外労働と同様の割増賃金を支払う会社や、独自に所定外労働のための賃金の仕組みを設けている会社もあります。
休日出勤とその割増支給について
労基法は労働者に与えるべき休日数を定め、その休日に出勤をさせた場合は割増賃金を支払うよう義務付けています。
労基法という法律によって定められた休日であるという意味で一般的に法定休日と呼ばれていますが、労基法は単純に休日の規定を設けているだけであり、扱いの異なる休日の定義を複数種類設けているわけではありません。労基法の定める休日は一つだけです。
よって職場において休日についての特別の定めや区別なく週に2日間休日を設けているいる場合、割増賃金の対象となる法定休日を2日与えていると解釈しうる場合もあります。
多くの場合、労基法で義務付けられる休日を週に1日「法定休日」として確保したうえで、会社独自の休日である「所定休日」を別途設けることにより所定休日の出勤については法定休日の割増賃金を回避しようとする工夫がされることが多いようです。
ただし、この場合でも就業規則において二つの休日の扱いの違いについて明確に定めておくことが理想的です。
労基法で定める割増賃金の対象となる労働について
法定外労働、深夜労働、法定休日労働です。
法定外労働とはならない残業について
一般的な残業という言葉の意味は、定められた労働時間の前後にその労働時間を延長して労働する事とされ、労基法に定める割増賃金の対象とすべき労働時間と同義ではありません。
一日の労働時間が8時間の労働者にとって残業すなわち法定外労働となりますが、3時間の労働者にとっては1時間の残業でも法定外労働にはなりません。
通常の労働時間以外の労働であるが法定外労働ではないいわゆる「所定外労働」に対して、労基法は特別の定めを設けていません。
割増賃金の規定は法定外労働、深夜労働、休日労働から労働者を保護することが目的であり、所定外労働はその定義の範囲外にあります。
しかし、割増賃金の対象となる労働ではないとしても、一般常識から考えてこの労働は勤務時間外の労働であり、残業と呼ばれるべきものであるため、社会において他の割増賃金の対象となる労働と同様に扱うことが一般的です。
この場合、法定外労働に義務付けられる割増をせずに、時給相当額を支給する仕組みの会社がほとんどでしょう。
他にも、法定外労働と同様の割増賃金を支払う会社や、独自に所定外労働のための賃金の仕組みを設けている会社もあります。
休日出勤とその割増支給について
労基法は労働者に与えるべき休日数を定め、その休日に出勤をさせた場合は割増賃金を支払うよう義務付けています。
労基法という法律によって定められた休日であるという意味で一般的に法定休日と呼ばれていますが、労基法は単純に休日の規定を設けているだけであり、扱いの異なる休日の定義を複数種類設けているわけではありません。労基法の定める休日は一つだけです。
よって職場において休日についての特別の定めや区別なく週に2日間休日を設けているいる場合、割増賃金の対象となる法定休日を2日与えていると解釈しうる場合もあります。
多くの場合、労基法で義務付けられる休日を週に1日「法定休日」として確保したうえで、会社独自の休日である「所定休日」を別途設けることにより所定休日の出勤については法定休日の割増賃金を回避しようとする工夫がされることが多いようです。
ただし、この場合でも就業規則において二つの休日の扱いの違いについて明確に定めておくことが理想的です。
割増賃金対象の賃金の計算方法
時給×労働時間×割増率
という極めて簡単な計算式なのですが、時給、労働時間、割増率それぞれが正確に何を意味するのかを誤ると正しい結果にはなりません。
給与の控除計算については使用者にある程度の裁量が与えられている一方、割増賃金の計算に使用すべき時給については労基法によって定められており、適切ではない時給を用いて計算をしてしまうと法に触れるおそれがあります
時給×労働時間×割増率
という極めて簡単な計算式なのですが、時給、労働時間、割増率それぞれが正確に何を意味するのかを誤ると正しい結果にはなりません。
給与の控除計算については使用者にある程度の裁量が与えられている一方、割増賃金の計算に使用すべき時給については労基法によって定められており、適切ではない時給を用いて計算をしてしまうと法に触れるおそれがあります
時給について
時給労働者の時給
定められた時給で働く時給労働者の場合、割増賃金の計算のための時給も同じ時給を使うことができます。
注意点として、条件によって時給が変動する場合(勤務時間帯によって時給が変動するなど)は割増賃金の対象となる労働が発生している時における時給によって賃金を計算しなければなりません。
月給制における時給の算出方法
定められた時給で働く時給労働者と異なり、月給制の労働者は割増賃金の計算のための時給を算出しなければなりません。
このときの時給とは、給与の控除計算のために算出した時給とは異なることに気を付けてください。
控除計算用の時給はその月ごとの控除計算のための時給であり、毎月変動するものであり、給与の各種手当のうち控除計算が必要な手当につき控除計算をするための時給でしかありません。例えば、控除されずに全額支給される手当は控除計算用の時給には入っていないのです。
割増賃金計算のための時給を算出するための計算式
(対象とすべき賃金の月額×12)÷年間の所定労働時間=割増賃金計算のための時給
1.時給を算出するための賃金について
割増賃金の計算のための時給は1年間で均された、その従業員の残業代を計算するうえで最もふさわしい時給を求める必要があります。
割増賃金の対象とすべき賃金とは、基本給や役職手当など毎月の労働の対価として支給されるもので、賞与や、住宅手当、家族手当、通勤費などは原則含まれません。これらを「除外賃金」と呼びます。
皆勤手当ては勤怠状況によって支給が決まるものですが、その労働者が労働契約を全うした場合に当然支給されるものとして、割増賃金計算の対象となる賃金に含まれます。
その月の割増賃金の対象とすべき賃金の合計額を12倍し、年間の所定労働時間で除すことで、1時間あたりの賃金=時給を算出することができます。
割増賃金計算の対象とすべき給与についての注意点
控除計算用の時給を割増賃金計算用の時給に使うことは適切ではありませんが、割増賃金計算用の時給を控除計算用の時給に使っても直ちに違法とはなりません。
このため、割増賃金計算用の設定を控除計算の設定に準用している給与計算ソフトもあるため注意が必要です。
例えば、日給月給制のある従業員の役職手当を控除計算の対象とせずに毎月固定額を支給している場合、この役職手当は控除計算用の時給に含まれない一方で割増賃金の対象となる時給には含まれることになります。このときに誤って割増賃金計算用の時給を用いて欠勤控除計算を行ってしまうと、固定額で支給されるはずの役職手当が控除されることになってしまいます。
他にも、日給月給制の従業員に皆勤手当を支給している場合、本来皆勤手当は控除計算の対象にはなりません(欠勤や遅刻早退と同時に不支給が確定するため)が、割増賃金計算用の時給には含めるべきとされています。よって皆勤手当を含んでいる割増賃金計算用の時給を用いて控除計算を行ってしまうと皆勤手当相当額を給与から重ねて控除してしまうことになります。
実際に誤った給与計算をしてしまった場合、当該手当の明細上の金額は変化がなく、欠勤控除の金額の内部に間接的に含まれているため少し見ただけでは間違いに気づきにくい性質であることが厄介です。
このような簡易な仕組みの給与計算ソフトは、毎月支給する給与がすべて控除計算の対象となり、割増賃金の対象となり、かつ毎月の所定労働日数が同一といったシンプルな給与形態であれば問題なく運用できるはずですが、より正確さを求める場合には、控除計算と残業代計算を別々の計算工程として行うことができるソフトを検討するべきでしょう。
時給労働者の時給
定められた時給で働く時給労働者の場合、割増賃金の計算のための時給も同じ時給を使うことができます。
注意点として、条件によって時給が変動する場合(勤務時間帯によって時給が変動するなど)は割増賃金の対象となる労働が発生している時における時給によって賃金を計算しなければなりません。
月給制における時給の算出方法
定められた時給で働く時給労働者と異なり、月給制の労働者は割増賃金の計算のための時給を算出しなければなりません。
このときの時給とは、給与の控除計算のために算出した時給とは異なることに気を付けてください。
控除計算用の時給はその月ごとの控除計算のための時給であり、毎月変動するものであり、給与の各種手当のうち控除計算が必要な手当につき控除計算をするための時給でしかありません。例えば、控除されずに全額支給される手当は控除計算用の時給には入っていないのです。
割増賃金計算のための時給を算出するための計算式
(対象とすべき賃金の月額×12)÷年間の所定労働時間=割増賃金計算のための時給
1.時給を算出するための賃金について
割増賃金の計算のための時給は1年間で均された、その従業員の残業代を計算するうえで最もふさわしい時給を求める必要があります。
割増賃金の対象とすべき賃金とは、基本給や役職手当など毎月の労働の対価として支給されるもので、賞与や、住宅手当、家族手当、通勤費などは原則含まれません。これらを「除外賃金」と呼びます。
皆勤手当ては勤怠状況によって支給が決まるものですが、その労働者が労働契約を全うした場合に当然支給されるものとして、割増賃金計算の対象となる賃金に含まれます。
その月の割増賃金の対象とすべき賃金の合計額を12倍し、年間の所定労働時間で除すことで、1時間あたりの賃金=時給を算出することができます。
割増賃金計算の対象とすべき給与についての注意点
控除計算用の時給を割増賃金計算用の時給に使うことは適切ではありませんが、割増賃金計算用の時給を控除計算用の時給に使っても直ちに違法とはなりません。
このため、割増賃金計算用の設定を控除計算の設定に準用している給与計算ソフトもあるため注意が必要です。
例えば、日給月給制のある従業員の役職手当を控除計算の対象とせずに毎月固定額を支給している場合、この役職手当は控除計算用の時給に含まれない一方で割増賃金の対象となる時給には含まれることになります。このときに誤って割増賃金計算用の時給を用いて欠勤控除計算を行ってしまうと、固定額で支給されるはずの役職手当が控除されることになってしまいます。
他にも、日給月給制の従業員に皆勤手当を支給している場合、本来皆勤手当は控除計算の対象にはなりません(欠勤や遅刻早退と同時に不支給が確定するため)が、割増賃金計算用の時給には含めるべきとされています。よって皆勤手当を含んでいる割増賃金計算用の時給を用いて控除計算を行ってしまうと皆勤手当相当額を給与から重ねて控除してしまうことになります。
実際に誤った給与計算をしてしまった場合、当該手当の明細上の金額は変化がなく、欠勤控除の金額の内部に間接的に含まれているため少し見ただけでは間違いに気づきにくい性質であることが厄介です。
このような簡易な仕組みの給与計算ソフトは、毎月支給する給与がすべて控除計算の対象となり、割増賃金の対象となり、かつ毎月の所定労働日数が同一といったシンプルな給与形態であれば問題なく運用できるはずですが、より正確さを求める場合には、控除計算と残業代計算を別々の計算工程として行うことができるソフトを検討するべきでしょう。
2.時給を算出するために用いる年間の所定労働時間について
1年間の所定労働時間とは雇用契約によって定められた1年間に予定される所定労働時間の合計値です。
年間の所定労働日数に日ごとの所定労働時間を乗じる方法で求めますが、変形労働時間制やフレックスタイム制の場合は月ごとの所定労働時間の年間の合計値となります。
年間の所定労働時間についての注意点
給与計算ソフトの中には時給算出のために年間の所定労働時間を定めるのではなく、月間の所定労働日数や所定労働時間を一律に固定値で定める仕組みのものがあります。
例えば全従業員の月の実際の所定労働時間が160時間で完全に固定され、年間所定労働時間は自ずと160×12=1920時間となる場合、時給を算出するにあたっては年間の合計値を使わずとも月間の数値で同一のものが算出できるため、このような給与計算の現場ではその月の残業代対象の賃金額を固定値で除して残業代計算用の時給を算出している場合が多々あります。
しかし月間の所定労働時間が年間を通して同一である場合や、同一でなくとも12か月で平均すれば固定値と完全に同一の数値になることは稀であり、さらに全従業員の労働時間がいかなる場合においても同一であるとは限らず、多くの場合年間所定労働時間として相応しくない数値によって時給の算出が行われていると予想されます。(年間所定労働時間を12で除して正確な平均所定労働時間を定めた場合はこの限りではありません)
一律で労働時間を定めてしまう方法は正確な方法ではありませんが、これによってすぐに法令に違反するわけではありません。
その数値が本来あるべき数値を下回ったときに、(本来より多い所定労働時間で除すことで時給があるべき額を下回ることによって)違反となります。
雇用環境は多様であり、さまざまな事情によって年間の所定労働時間を決定することができない事は当然に予想されます。
その際には、予想される時間数の最も少ない値で時給を算出することで違法となるリスクを回避することができます。
1年間の所定労働時間とは雇用契約によって定められた1年間に予定される所定労働時間の合計値です。
年間の所定労働日数に日ごとの所定労働時間を乗じる方法で求めますが、変形労働時間制やフレックスタイム制の場合は月ごとの所定労働時間の年間の合計値となります。
年間の所定労働時間についての注意点
給与計算ソフトの中には時給算出のために年間の所定労働時間を定めるのではなく、月間の所定労働日数や所定労働時間を一律に固定値で定める仕組みのものがあります。
例えば全従業員の月の実際の所定労働時間が160時間で完全に固定され、年間所定労働時間は自ずと160×12=1920時間となる場合、時給を算出するにあたっては年間の合計値を使わずとも月間の数値で同一のものが算出できるため、このような給与計算の現場ではその月の残業代対象の賃金額を固定値で除して残業代計算用の時給を算出している場合が多々あります。
しかし月間の所定労働時間が年間を通して同一である場合や、同一でなくとも12か月で平均すれば固定値と完全に同一の数値になることは稀であり、さらに全従業員の労働時間がいかなる場合においても同一であるとは限らず、多くの場合年間所定労働時間として相応しくない数値によって時給の算出が行われていると予想されます。(年間所定労働時間を12で除して正確な平均所定労働時間を定めた場合はこの限りではありません)
一律で労働時間を定めてしまう方法は正確な方法ではありませんが、これによってすぐに法令に違反するわけではありません。
その数値が本来あるべき数値を下回ったときに、(本来より多い所定労働時間で除すことで時給があるべき額を下回ることによって)違反となります。
雇用環境は多様であり、さまざまな事情によって年間の所定労働時間を決定することができない事は当然に予想されます。
その際には、予想される時間数の最も少ない値で時給を算出することで違法となるリスクを回避することができます。
3.時給を算出する過程においての端数処理、その他金額の調整について
給与額は多い方が従業員有利になります。
時給を算出するために用いる所定労働時間は少ない方が(時給が増加することで)従業員有利になります。
少数点以下の数値は切り捨てずに繰り上げると従業員有利になります。
給与の控除計算の場合は時給額が少ない方が従業員にとって有利となりますが、残業代や休日出勤手当のための時給は額が多い方が従業員にとって有利となります。給与計算の現場ではこの二つの方向性の違いについて混同することがないように注意が必要です。
給与額は多い方が従業員有利になります。
時給を算出するために用いる所定労働時間は少ない方が(時給が増加することで)従業員有利になります。
少数点以下の数値は切り捨てずに繰り上げると従業員有利になります。
給与の控除計算の場合は時給額が少ない方が従業員にとって有利となりますが、残業代や休日出勤手当のための時給は額が多い方が従業員にとって有利となります。給与計算の現場ではこの二つの方向性の違いについて混同することがないように注意が必要です。
割増率について
法定外労働 月60時間未満25%
月60時間超50%(中小企業も2023年4月より適用となっています)
法定休日労働 35%
深夜労働 25%
この数値は割り増すべき数値を示したものです。
例えば、60時間未満の法定外労働時間の残業代の計算をする場合、割増率は25%ですから
残業計算用の時給×法定外労働時間×1.25 によって実際の金額を求めることができます。
深夜割増賃金について
深夜労働と他の条件が同時に発生する場合、割増率は加算されます。
例えば、法定外労働かつ深夜の場合は25%+25%=50%の割増率です。
深夜労働は深夜に労働をした事につき生ずる割増賃金であり、その労働が労働契約によって定められる所定労働かそれ以外かを問いません。よって残業や休日出勤を全くしていない従業員であっても深夜労働をしている場合、割増賃金の計算が必要になります。
深夜割増の計算の流れについて
勤怠管理ソフトによって深夜を除く法定外労働時間Aと法定外深夜時間Bを完全分離させて表記しているもの(A or B)と、深夜時間を含む合計値と深夜時間を表記しているもの(A+B or B)の二種類があり、後者の場合、深夜割増賃金の計算は割増額のみを求めます。
計算そのものは簡単ですが、勤怠管理ソフトから出力されたデータがどちらに属するかを間違えることがないよう気を付けてください。
深夜割増賃金は、管理監督者の地位にある従業員に対しても支払わなければなりません。この場合、当該従業員に対しては割増額のみが賃金として支給されることになります。
法定外労働 月60時間未満25%
月60時間超50%(中小企業も2023年4月より適用となっています)
法定休日労働 35%
深夜労働 25%
この数値は割り増すべき数値を示したものです。
例えば、60時間未満の法定外労働時間の残業代の計算をする場合、割増率は25%ですから
残業計算用の時給×法定外労働時間×1.25 によって実際の金額を求めることができます。
深夜割増賃金について
深夜労働と他の条件が同時に発生する場合、割増率は加算されます。
例えば、法定外労働かつ深夜の場合は25%+25%=50%の割増率です。
深夜労働は深夜に労働をした事につき生ずる割増賃金であり、その労働が労働契約によって定められる所定労働かそれ以外かを問いません。よって残業や休日出勤を全くしていない従業員であっても深夜労働をしている場合、割増賃金の計算が必要になります。
深夜割増の計算の流れについて
勤怠管理ソフトによって深夜を除く法定外労働時間Aと法定外深夜時間Bを完全分離させて表記しているもの(A or B)と、深夜時間を含む合計値と深夜時間を表記しているもの(A+B or B)の二種類があり、後者の場合、深夜割増賃金の計算は割増額のみを求めます。
計算そのものは簡単ですが、勤怠管理ソフトから出力されたデータがどちらに属するかを間違えることがないよう気を付けてください。
深夜割増賃金は、管理監督者の地位にある従業員に対しても支払わなければなりません。この場合、当該従業員に対しては割増額のみが賃金として支給されることになります。
固定残業代の基本的な仕組み
実際の残業時間に基づいた残業代を算出し、固定残業代より少なければ固定残業代のみを、固定残業代を超過していれば超過分を固定残業代とともに支給しなければなりません。
時間を基準として支給する固定残業代
固定額を支給する場合の他に、時間単位で支給する場合があります。
例えば、30時間の固定残業代を支給すると定められている場合、その額は、残業計算用の時給×30時間×1.25(割増率)で求めることができます。
固定残業代を導入する職場において、従業員はフルタイムで労働していると仮定すると、発生する残業はほとんどが法定外労働であると予想されます。
よって、固定残業代の中に割増賃金を含めることを忘れないようにしてください。
残業の範囲 含めてよいもの、問題となりやすいもの。
固定残業代における残業とは社会通念上所定外労働、法定外労働を意味し、法定休日を含めるべきではありません。
労基法によって義務付けられた休日である法定休日を固定残業代の残業の範囲に含めると、法定休日を間接的に否定することを意味するためです。
同様に80時間を超える固定残業代も、違法な法定外労働を肯定している趣旨に捉えられかねず、好ましくありません。
深夜労働を固定残業代に含める場合、前述の二つの労働時間の深夜部分に相当する所定外深夜、法定外深夜が含まれますが、これに加えて所定深夜を含めるべきかについては、所定労働における深夜労働を残業と定義するかどうか、会社によって考え方は異なるでしょう。
「所定労働における深夜労働は厳密にいえば残業ではないため、残業代の対象に含めない」という考えに基づけば所定深夜労働は固定残業代とは別に支給すべきことになります。夜勤の多い職場においては、従業員間の所定深夜労働時間の差が固定残業代で吸収されることがないように通常の勤務時間における深夜労働を残業と区別することが求められる場合もあるでしょう。
「所定深夜労働も幅広い意味で残業である」と解釈する場合、所定深夜を所定外深夜と法定外深夜の労働時間とともに深夜残業時間として計上します。
固定残業代の控除計算
日給月給制の給与計算において従業員の欠勤や遅刻早退に応じた控除計算が行われるように、固定残業代も控除計算の対象とされる場合があります。
出勤しなければ残業は発生しないという理屈から、その月において1日も出勤しなかった従業員に固定残業代が満額で支払われるのは不平等だと考える人も多いのではないでしょうか。
反対に、遅刻早退と残業の発生とは無関係であるという考え方に基づけば、出勤さえしていれば残業の可能性はゼロではない以上、遅刻早退による固定残業代の控除はすべきではないと言うこともできます。
固定残業代も控除計算が可能な給与であり、その控除方法は法令に違反しない限りにおいて独自に定めることができます。
最も一般的な控除方法は、遅刻早退控除などの時間による控除はせずに、欠勤控除のみを行う方法です。
日給制における固定残業代
日給制の労働契約に固定残業代が付されている場合があります。
日ごとに発生する不確定な残業代の計算の簡略化という点や、固定残業代を含めることで日給額を増やすことができる点を目的として利用されますが、トラブルなく運用するために気を付けるべきことがあります。
①日ごとに固定残業代が支給されている場合、残業がなかったとしても固定残業代を翌日以降に繰り越すことはできない。
②労働時間の把握を継続する事。法定外労働時間が60時間を超える場合、固定残業代だけでは割増賃金が不足するおそれがある。
③日給に固定残業代が含まれているという事実について従業員が理解しているか。残業をしたが残業代が支払われなかったと主張し、争訟に発展するおそれがある。
固定残業代について、おわりに
固定残業代は煩雑な残業代計算の簡略化や従業員にとって毎月の賃金額を確定的に増額させる点などのメリットから広く普及しましたが、残業代計算の簡略化という点については現在評価が変わってきています。
固定残業代がない職場であれば、残業代の計算だけで終わっていたものが、固定残業代がある場合は残業代と固定残業代の双方の計算が必要になります。
毎月の残業代が固定残業代を超過しないときは、たとえ残業代計算を誤ったとしても固定残業代のみを支給していれば問題は表面化しないという点が固定残業代の利点ですが、ひとたび超過することとなった場合、真の残業代の計算を正確に行わなくてはならず、いずれにせよ残業代の計算は常に行う必要があるのです。
固定残業代を控除計算の対象としている場合、残業代計算と並行して行わなければなりません。
また、固定残業代は会社が独自に設けたルールであるため、就業規則の解釈の違いから労使間のトラブルを招くこともあります。
適切に運用するためにも、就業規則に固定残業代の詳細を設けているかが重要となります。
就業規則や雇用契約書は労働者に内容が伝わってはじめて意味をもち、本人が署名しているから問題ないという考え方は、労使の力関係の差によっては時に通用しない場面もあるでしょう。
これらの書面については、あいまいな表現が排除されたものであることは言うまでもないことですが、長らく用いられた定型文のコピーではなく、労働者にとってわかりやすく、理解しやすい文章を使用する潮流に変わりつつあります。
作成者自身によって選ばれた言葉で、平易かつ矛盾なく文章化することが将来のトラブルを予防するために不可欠です。
固定残業代という仕組みを適切に運用することができれば、毎月変動する不安定な残業代とは異なり、固定残業代は安定的に所得を増やすことができる残業代として、従業員の毎月の生活費にとって大きな助けになるものであるという魅力は失われません。
実際の残業時間に基づいた残業代を算出し、固定残業代より少なければ固定残業代のみを、固定残業代を超過していれば超過分を固定残業代とともに支給しなければなりません。
時間を基準として支給する固定残業代
固定額を支給する場合の他に、時間単位で支給する場合があります。
例えば、30時間の固定残業代を支給すると定められている場合、その額は、残業計算用の時給×30時間×1.25(割増率)で求めることができます。
固定残業代を導入する職場において、従業員はフルタイムで労働していると仮定すると、発生する残業はほとんどが法定外労働であると予想されます。
よって、固定残業代の中に割増賃金を含めることを忘れないようにしてください。
残業の範囲 含めてよいもの、問題となりやすいもの。
固定残業代における残業とは社会通念上所定外労働、法定外労働を意味し、法定休日を含めるべきではありません。
労基法によって義務付けられた休日である法定休日を固定残業代の残業の範囲に含めると、法定休日を間接的に否定することを意味するためです。
同様に80時間を超える固定残業代も、違法な法定外労働を肯定している趣旨に捉えられかねず、好ましくありません。
深夜労働を固定残業代に含める場合、前述の二つの労働時間の深夜部分に相当する所定外深夜、法定外深夜が含まれますが、これに加えて所定深夜を含めるべきかについては、所定労働における深夜労働を残業と定義するかどうか、会社によって考え方は異なるでしょう。
「所定労働における深夜労働は厳密にいえば残業ではないため、残業代の対象に含めない」という考えに基づけば所定深夜労働は固定残業代とは別に支給すべきことになります。夜勤の多い職場においては、従業員間の所定深夜労働時間の差が固定残業代で吸収されることがないように通常の勤務時間における深夜労働を残業と区別することが求められる場合もあるでしょう。
「所定深夜労働も幅広い意味で残業である」と解釈する場合、所定深夜を所定外深夜と法定外深夜の労働時間とともに深夜残業時間として計上します。
固定残業代の控除計算
日給月給制の給与計算において従業員の欠勤や遅刻早退に応じた控除計算が行われるように、固定残業代も控除計算の対象とされる場合があります。
出勤しなければ残業は発生しないという理屈から、その月において1日も出勤しなかった従業員に固定残業代が満額で支払われるのは不平等だと考える人も多いのではないでしょうか。
反対に、遅刻早退と残業の発生とは無関係であるという考え方に基づけば、出勤さえしていれば残業の可能性はゼロではない以上、遅刻早退による固定残業代の控除はすべきではないと言うこともできます。
固定残業代も控除計算が可能な給与であり、その控除方法は法令に違反しない限りにおいて独自に定めることができます。
最も一般的な控除方法は、遅刻早退控除などの時間による控除はせずに、欠勤控除のみを行う方法です。
日給制における固定残業代
日給制の労働契約に固定残業代が付されている場合があります。
日ごとに発生する不確定な残業代の計算の簡略化という点や、固定残業代を含めることで日給額を増やすことができる点を目的として利用されますが、トラブルなく運用するために気を付けるべきことがあります。
①日ごとに固定残業代が支給されている場合、残業がなかったとしても固定残業代を翌日以降に繰り越すことはできない。
②労働時間の把握を継続する事。法定外労働時間が60時間を超える場合、固定残業代だけでは割増賃金が不足するおそれがある。
③日給に固定残業代が含まれているという事実について従業員が理解しているか。残業をしたが残業代が支払われなかったと主張し、争訟に発展するおそれがある。
固定残業代について、おわりに
固定残業代は煩雑な残業代計算の簡略化や従業員にとって毎月の賃金額を確定的に増額させる点などのメリットから広く普及しましたが、残業代計算の簡略化という点については現在評価が変わってきています。
固定残業代がない職場であれば、残業代の計算だけで終わっていたものが、固定残業代がある場合は残業代と固定残業代の双方の計算が必要になります。
毎月の残業代が固定残業代を超過しないときは、たとえ残業代計算を誤ったとしても固定残業代のみを支給していれば問題は表面化しないという点が固定残業代の利点ですが、ひとたび超過することとなった場合、真の残業代の計算を正確に行わなくてはならず、いずれにせよ残業代の計算は常に行う必要があるのです。
固定残業代を控除計算の対象としている場合、残業代計算と並行して行わなければなりません。
また、固定残業代は会社が独自に設けたルールであるため、就業規則の解釈の違いから労使間のトラブルを招くこともあります。
適切に運用するためにも、就業規則に固定残業代の詳細を設けているかが重要となります。
就業規則や雇用契約書は労働者に内容が伝わってはじめて意味をもち、本人が署名しているから問題ないという考え方は、労使の力関係の差によっては時に通用しない場面もあるでしょう。
これらの書面については、あいまいな表現が排除されたものであることは言うまでもないことですが、長らく用いられた定型文のコピーではなく、労働者にとってわかりやすく、理解しやすい文章を使用する潮流に変わりつつあります。
作成者自身によって選ばれた言葉で、平易かつ矛盾なく文章化することが将来のトラブルを予防するために不可欠です。
固定残業代という仕組みを適切に運用することができれば、毎月変動する不安定な残業代とは異なり、固定残業代は安定的に所得を増やすことができる残業代として、従業員の毎月の生活費にとって大きな助けになるものであるという魅力は失われません。